「点と直線の距離」を使う状況に出くわした時、うっ,思い出せない…と思ったことはありませんか?
実は「点と直線の公式」は慣れてしまえば忘れることはなくなります。
複雑そうな式も、一つひとつの意味をしっかり押さえれば、自然と覚えられてしまうからです。
この記事では,点と直線の距離の公式の覚え方をわかりやすく説明します。
点と直線の距離は,覚えづらい割に使用頻度が高いので,しっかりマスターしていきましょう!
- 点と直線の距離公式の意味がわかる
- 点と直線の距離公式が覚えやすくなる
- ついでに証明のしかたもわかる
粗茶
- 文系に特化して数学を分かりやすく教える高校数学の専門家
- 指導歴14年
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点と直線の距離とは
点と直線の距離の公式とは,こちらです。
点(p,q) と,直線 ax+by+c=0 の距離を d とすると,
d=\cfrac{|ap+bq+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}
個人的には,数Ⅱ・Bの中で,学習者にとって「最悪」の公式だと思っています。
なぜなら点と直線の距離公式は,
- 複雑
- よく使う
- 自分でつくるのが困難
という奇跡の三拍子が見事に揃っているからです。
これを文字だけで単純に暗記しても,すぐに忘れてしまいます。
要素ごとに何をやっているのかを細かく見ながら,使えるようにしていきましょう。
点と直線の距離公式を覚える
それでは,点と直線の公式を,絵描き歌風(?)に,順を追って描いていきますよ。
点と直線の距離公式を使うとき,直線の方程式は必ずax+by+c=0の形で使います。
ax+by+c=0の形になっていない場合は,変形してから公式を使いましょう。
順を追って見ていけば,意外と難しくないですよ!ね!(強引)。
実際に使ってみる
公式そのままの問題
具体的な例題で,距離を求めてみましょう。
点(2,3)と直線5x-4y+10=0の距離を求めよ。
例題っていっても,公式に当てはめるだけなのです。
分母のルートの中には,xとyの係数の2乗の和を,分子の絶対値には直線に点を代入したものを書くよ。
解答はこちら。
\cfrac{|5\cdot 2-4\cdot 3+10|}{\sqrt{5^2+(-4)^2}}=\cfrac{8}{\sqrt{41}} …(答)
分母の有理化はしてもしなくてもいいと思います。
円の接線を求めるときに多用します
ただ距離を求めるだけでは嬉しさも少なめです。
実用としては,円の接線を求めるときによく使われます。
上の図のように,円の中心と接線の距離は,円の半径と同じになることを利用して,円の接線の問題ができます。
具体的な問題は,円の接線の記事で紹介していますので,よかったらどうぞ。
点と直線の距離公式の証明
点と直線の距離公式の証明方法はいくつかありますが,なるべく短く済む方法をやります。
(p,q)をP,Pから直線に下ろした垂線の足をHとしたときのPHの長さが出ればOK。おうちに帰れます。
説明の都合上,図の向きが変わりましたが,計算は同じです。
今回の方法の場合,直線の式をy=\cdots の形に変形します。
ax+by+c=0 \Leftrightarrow y=-\cfrac{a}{b}x-\cfrac{c}{b}
この先の計算が煩雑にならないように,一旦,
m=-\cfrac{a}{b},n=-\cfrac{c}{b} …(*)として,
y=mx+n …①
としておきます。
次に,直線x=pを引いて,①との交点をQとします。
さらに,下図のRSが1となるような場所に,①から垂線RSを引きます。
ここでできる2つの三角形は,3角が等しいので,相似です。
(△PQH∽△SQR)
Qはx=pと①の交点なので,x座標はp,y座標は①にx=pを代入してmp+nになります。
PQの長さは,PとQのy座標の差なので,|mp+n-q|
図によってはmp+nよりもqのほうが大きい場合もあるので,絶対値をつけておきましょう。
次に,△SRQの辺の長さを求めます。傾きに注目します。
①の傾きはmですが,これはQSの傾きでもあって,
m=\cfrac{\rm RQ}{\rm RS}=\cfrac{\rm RQ}{1}
ということで,{\rm RQ}=m
さらに三平方の定理で,{\rm SQ}=\sqrt{m^2+1^2}
△PQH∽△SQR より,
{\rm PH:SR=PQ:SQ}
⇔{\rm PH}=\cfrac{\rm PQ\cdot SR}{\rm SQ}
=\cfrac{|mp+n-q|\cdot 1}{\sqrt{m^2+1}}
=\cfrac{|mp+n-q|}{\sqrt{m^2+1}}
(*)より,m=-\cfrac{a}{b},n=-\cfrac{c}{b} だったので,これらを代入して,
{\rm PH}=\cfrac{\left|-\cfrac{a}{b}\cdot p-\cfrac{c}{b}-q\right|}{\sqrt{\left(-\cfrac{a}{b}\right)^2+1}}
=\cfrac{\left|\cfrac{a}{b}\cdot p+q+\cfrac{c}{b}\right|}{\sqrt{\cfrac{a^2}{b^2}+1}}
絶対値の中身にマイナスをかけても,全体の値は変わりません。
最後に分母と分子をb倍して,
{\rm PH}=\cfrac{|ap+bq+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}
できました!!
道のりは長いですが,おそらくこれが計算量が最も少なくてできる方法だと思います。
もし機会があれば,ぜひご採用ください。
点と直線の距離 まとめ
この記事では,点と直線の距離の公式の覚え方と,証明を紹介しました。
点と直線の距離の公式は,基本的に暗記でいくしかありません。
自分で求めるのはかなり困難ですからね。
点と直線の距離の覚え方のポイントをおさらいしておくと,
- 直線の式はax+by+c=0の形
- 分母はルート,分子は絶対値
- 分母にはxとyの係数の2乗の和
- 分子には点を代入したもの
でした。
きちんと言葉で覚えるようにしておくと,忘れにくいですよ!
図形と方程式 おすすめ参考書
安定の坂田先生です。
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