数学の問題の解答で突然,
相加・相乗平均の大小により…
って出てきて,
なんで急に相加相乗平均なの?
って疑問に思ったことはありませんか?
実は,相加・相乗平均の大小関係を使うタイミングは決まっていて,
2つの正の数の和の最小値を求めるとき
に使うことがほとんどです。
この記事では,相加・相乗平均の大小関係の使い時と使い方を,実際の例題を交えて解説していきます。
この記事を読むと,相加・相乗平均の使い方はもちろん,使える状況を見抜く目を養うことができます。
苦手な人が多い相加・相乗平均。使い時を見極めて,周りを一歩リードしちゃいましょう!
- 相加・相乗平均の関係の使い時と使い方がわかる
粗茶
- 文系に特化して数学を分かりやすく教える高校数学の専門家
- 指導歴14年
- 数学が苦手で何から始めたらいいか分からない文系高校生の悩みを解決するコンテンツを展開しています。
数学の問題集の進め方について、noteでも発信しています。よろしければご覧ください!
相加・相乗平均とは
まずは相加・相乗平均とは何か説明します。
相加平均とは
相加平均は,いくつかの数を足し合わせて,その個数で割ったものです。
いわゆる一般的な平均のことです。
今回は,2つの数を扱うので,相加平均は次の式になります。
2つの数◯,△の相加平均は,
\cfrac{◯+△}{2}
2つを足して2で割るということです。
平均って,これしかないんじゃないの?
日常生活ではあまり見かけませんが,別の平均もあるんですなあ。
相乗平均とは
相乗平均とは,正の数をかけあわせて,n乗根をしたものです。
n乗根ってなに?
数Ⅱを習っていない人は知らないかもしれないですね。2個の数の場合は普通のルートのことなので,とりあえず次の形で覚えておいてください。
2つの正の数◯,△の相乗平均は,
\sqrt{◯\times△}
2つをかけてルートをつけると,相乗平均です。
相乗平均は,変化率(人口増加率など)の平均を求めるときなどに使われています。
詳細は本記事の本筋と離れていくので,またの機会にお話します。
相加・相乗平均の関係とは
相加平均と相乗平均を比べると,
\cfrac{◯+△}{2}\geqq \sqrt{◯\times△}
という大小関係があります。
相加平均は,相乗平均より大きいか,等しいんですね。
実際の問題で使う場合は,両辺を2倍した形が便利なので,次のように覚えましょう。
◯>0,△>0のとき,
◯+△\geqq 2\sqrt{◯\times△}
等号は,◯=△で成立。
なお,◯と△は正の数でないと成り立たないことにも注意しましょう。
相加・相乗平均の大小関係の証明
◯をa,△をbとすると,
a+b=2\sqrt{ab}(等号はa=bで成立)
になるので,これを証明します。
\begin{array}{ll} &(左辺)^2-(右辺)^2\\\\ =&(a+b)^2-(2\sqrt{ab})^2\\\\ =&a^2+2ab+b^2-4ab\\\\ =&a^2-2ab+b^2\\\\ =&(a-b)^2\geqq 0\\\\ \therefore&(a+b)^2\geqq (2\sqrt{ab})^2\\\\ \end{array}
\begin{array}{c} a+b>0,2\sqrt{ab} なので,\\\\ a+b\geqq 2\sqrt{ab} \end{array}
\begin{array}{ll} &等号は,\\\\ &(a-b)^2=0\\\\ \Leftrightarrow&a-b=0\\\\ \therefore&a=b\\\\ &で成立する。 \end{array}
相加・相乗平均は,「2つの正の数の和の最小値」を求めるときに使う
相加・相乗平均って,結局いつ使うの?
相加・相乗平均の大小関係を使うタイミングは,これです。
相加・相乗平均の大小関係は,
2つの正の数の和の最小値を求めるときに使う!
2つの正の数は,かけると文字が消えるもの
具体的な問題をやってみましょう。
a>0のとき,
a+\cfrac{4}{a}
の最小値と,そのときのaの値を求めよ。
a>0より,\cfrac{4}{a}>0でもあるので,2つの正の数の和になっています。
さらに最小値を求める問題ということで,相加・相乗平均が使える条件を満たしています。
◯+△\geqq 2\sqrt{◯\times△}
の,◯にa,△に\cfrac{4}{a}を当てはめましょう。
相加・相乗平均の大小関係により,
\begin{array}{l} a+\cfrac{4}{a}\geqq 2\sqrt{a\cdot \cfrac{4}{a}} \end{array}
右辺はaが約分できて,2\sqrt{4}=4
\begin{array}{l} \therefore a+\cfrac{4}{a}\geqq 4 \end{array}
a+\cfrac{4}{a}は4以上である。ということは示せました。
4以上ってことは,最小値は4でOK?
4以上だからといって,最小値が4になるとは限らないのです。
例えば,3人の子どもがいて,5歳,6歳,7歳だったとします。
「3人とも4歳以上ですか?」
と聞かれたら,間違いなく4歳以上です。
でも,「最年少は4歳ですか?」
と聞かれたら,最年少は5歳なので,間違いになります。
つまり,全員が4歳以上であることと,最小値が4歳であることは,同じではないのです。
話を戻しましょう。
a+\cfrac{4}{a}\geqq 4だとわかったあとに,a+\cfrac{4}{a}の最小値が4であることを示すためには,
a+\cfrac{4}{a}=4になるaがあるかどうかを求める必要があります。
いわゆる等号成立条件ですね。
あー,めっちゃ聞いたことあるけどいつも適当にしてるやつやー
相加・相乗平均の大小関係の式については,等号成立条件は「◯=△」だとわかっているので,あてはめて簡単にすればOK。
等号は,
\begin{array}{l} a=\cfrac{4}{a} \Leftrightarrow a^2=4\\\\ a>0より,\\\\ a=2 で成立。 \end{array}
つまり,最小値4をとるaは2ということ。
よって,a=2のとき,最小値4…(答)
相加・相乗平均が使える問題であることを見抜くことができれば,あとは公式に当てはめればできてしまいます。
積の形は展開してから
少し見かけがかわりますが,こちらも相加・相乗平均を使う問題です。
a>0,b>0のとき,
\left(a+\cfrac{4}{b}\right)\left(b+\cfrac{2}{a}\right)
の最小値を求めよ。
展開してみましょう。
\begin{array}{l} \left(a+\cfrac{4}{b}\right)\left(b+\cfrac{2}{a}\right)={\color{red}ab+\cfrac{8}{ab}}+6\\\\ \end{array}
ここで,右辺の{\color{red}ab+\cfrac{8}{ab}}に注目。
a>0,b>0より,ab>0,\cfrac{8}{ab}>0なので,2つの正の数の和になっている。
やはり,最小値になっているので,相加・相乗平均は使える条件を満たしています。
再び,
◯+△\geqq 2\sqrt{◯\times△}
の,◯にab,△に\cfrac{8}{ab}をあてはめます。
相加・相乗平均の大小関係により,
\begin{array}{l} ab+\cfrac{8}{ab}\geqq 2\sqrt{ab\cdot \cfrac{8}{ab}} \end{array}
右辺はaが約分できて,2\sqrt{8}=4\sqrt{2}
\begin{array}{l} \therefore ab+\cfrac{8}{ab}\geqq 4\sqrt{2} \end{array}
元の問題は,+6がついているので,両辺に6をたして,
ab+\cfrac{8}{ab}+6\geqq 4\sqrt{2}+6
ということで最小値は4\sqrt{2}+6になりそうです。
あとは等号成立条件。「◯=△」を解きます。
等号は,
\begin{array}{l} ab=\cfrac{8}{ab} \Leftrightarrow (ab)^2=8\\\\ ab>0より,\\\\ ab=2\sqrt{2} で成立。 \end{array}
よって,ab=2\sqrt{2}で,最小値4\sqrt{2}+6 …(答)
2つの正の数の和(かけると文字が消える)の最小値を求める問題で,相加・相乗平均を使うことができます。
他の分野の問題の中にさりげなく登場することが多いので,気付けるかどうかは簡単ではないですが,そこは経験がモノを言うことになるでしょう。
おまけ:3つ以上の数の相加相乗平均でも同様に成り立つ
多くの場合,2つの数の相加・相乗平均を使いますが,
3つ以上の数の相加・相乗平均も同様の大小関係があります。
x_1>0,x_2>0,\cdots,x_n>0のとき,
\cfrac{x_1+x_2+\cdots +x_n}{n}\geqq \sqrt[n]{x_1\cdot x_2\cdots x_n}
等号は,x_1=x_2=\cdots =x_nで成り立つ
証明はレベルが高いのでここでは省略しますが,3つ以上の数についても(相加平均)\geqq(相乗平均)が成り立つことが知られています。
私も問題で出会ったことはほとんどないので,参考程度に…
相加・相乗平均は使いどころの見極めが大切!
この記事では,相加・相乗平均の大小関係の使い時と使い方を説明しました。
相加・相乗平均は,2つの正の数の和の最小値を求めるときに使います。
また,相加・相乗平均を使って和の最小値を求める際には,
- 正の数の和であること
- 最後に等号成立条件を考える
という点に気をつけましょう。
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