二重根号が出てきたんだけど,これってそのままじゃだめなの?
だめということはないんですが,簡単な形にできる場合がありますよ。
\sqrt{4+2\sqrt{3}}のように,ルートの中にルートが入っている式を二重根号といいます。
テストでも時々登場するもので,形によっては外すことができます。
この記事では,二重根号の外し方の手順を詳しく説明するとともに,外すことができる理由と,外せるかどうかの判定法も紹介します。
これを読めば二重根号の知識は一通りマスターできますよ。
それでは張り切ってどうぞ!
- 二重根号の外し方がわかる
- 二重根号が外れる理由がわかる
- 二重根号が外れるかどうかの調べ方がわかる
粗茶
- 文系に特化して数学を分かりやすく教える高校数学の専門家
- 指導歴14年
- 数学が苦手で何から始めたらいいか分からない文系高校生の悩みを解決するコンテンツを展開しています。
二重根号と,基本的な外し方
二重根号とは、ルートの中にルートが含まれた式のことです。
例えば\sqrt{\sqrt{3}}とか、\sqrt{4+2\sqrt{3}}みたいな感じです。
最初の\sqrt{\sqrt{3}}は、数Ⅱの指数関数を習っている人なら、
\sqrt{\sqrt{3}}=\left((3^\frac{1}{2})\right)^{\frac{1}{2}}=3^\frac{1}{4}=\sqrt[4]{3}
とすることができるので、大して問題にはなりません。
ですが、もう一つの\sqrt{4+2\sqrt{3}}のように、ルートの中が多項式になっている場合は、なかなか厄介です。
そもそもこのままにしておいても大丈夫ではあるんですが、二重根号でない形にできる場合があるので、その場合の公式を紹介しましょう。
2つの数字の組み合わせを見つけよう
A>0,B>0のとき
\begin{aligned} \sqrt{A+2\sqrt{B}}=\sqrt{a}+\sqrt{b}\\\\ \sqrt{A-2\sqrt{B}}=\sqrt{a}-\sqrt{b} \end{aligned}
※ただしa,bは,
a+b=A,ab=B,a>b>0
を満たす。
\sqrt{{\color{red}4}+2\sqrt{\color{blue}3}}の場合だと,\color{red}Aが\color{red}4,\color{blue}Bが\color{blue}3にあたります。そして,
足して4,かけて3になる2つの数字a,bを見つけて,それを当てはめれば変形できるというわけです。
3+1=4,3×1=3なので,足して4,かけて3になる2つの数字は3と1とわかります。
よって,上の式にa=3,b=1をあてはめて,
\sqrt{4+2\sqrt{3}}=\sqrt{3}+\sqrt{1}=\color{red}\sqrt{3}+1
これで完了。
\sqrt{B}の前に2がある形(つまり{\color{red}2}\sqrt{B})になっていないと,二重根号は外すことができないので,注意しましょう!
引き算の場合は,大きい方を先にする
二重根号の中身が足し算になっているときは,2つの数字のどちらをaにしても大丈夫です。
\sqrt{4+2\sqrt{3}}の場合,a=1,b=3として,
\sqrt{4+2\sqrt{3}}=\sqrt{1}+\sqrt{3}=1+\sqrt{3}
としても問題ありません。
ですが,二重根号の中身が引き算になっているときは,必ず大きい方の数字をaにします。
例えば,\sqrt{8-2\sqrt{15}}の場合。
a+b=8,ab=15となるとき,a=5,b=3なので,
\sqrt{8-2\sqrt{15}}=\sqrt{5}-\sqrt{3}
と変形できます。
これを,a=3,b=5として,
\sqrt{8-2\sqrt{15}}=\sqrt{3}-\sqrt{5}
とやってはいけません。
そもそもルートの付いた数は,必ず0以上の値になります。
ですが,上の「間違った外し方」の\sqrt{3}-\sqrt{5}は,負の数になっていて,ルートのついた数が0以上であることに反してしまいます。
ですので,負の値にならないように必ず大きい数字を先に書くようにしましょう。
足し算の場合も,大きい数から書くクセをつけたほうがいいよね。
二重根号の公式が成り立つ理由
そもそも公式が覚えられないんですが…
二重根号を外す機会はそう多くないこともあって,公式を暗記しておくことは難しいですよね。
そんなあなたは,とりあえず「\sqrt{a}+\sqrt{b}の2乗から作られている!」ということだけでも覚えておくと,公式を忘れても自力で導くことができます。
実際に公式を作ってみましょう。
a>b>0とします。
\begin{aligned} (\sqrt{a}+\sqrt{b})^2=&(\sqrt{a})^2+2\sqrt{a}\sqrt{b}+(\sqrt{b})^2\\\\ =&a+2\sqrt{ab}+b\\\\ =&(a+b)+2\sqrt{ab} \end{aligned}
つまり,
(a+b)+2\sqrt{ab}=(\sqrt{a}+\sqrt{b})^2
ここで\sqrt{a}+\sqrt{b}>0なので,両辺にルートをつけて,
\sqrt{(a+b)+2\sqrt{ab}}=\sqrt{a}+\sqrt{b}
a+b=A,ab=Bとすれば,
\sqrt{A+2\sqrt{B}}=\sqrt{a}+\sqrt{b}
というふうに,公式を作ることができました。
引き算の場合も同様です。
a>b>0とします。
\begin{aligned} (\sqrt{a}-\sqrt{b})^2=&(\sqrt{a})^2-2\sqrt{a}\sqrt{b}+(\sqrt{b})^2\\\\ =&a-2\sqrt{ab}+b\\\\ =&(a+b)-2\sqrt{ab} \end{aligned}
つまり,
(a+b)-2\sqrt{ab}=(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2
ここで\sqrt{a}-\sqrt{b}>0なので,両辺にルートをつけて,
\sqrt{(a+b)-2\sqrt{ab}}=\sqrt{a}-\sqrt{b}
a+b=A,ab=Bとして,
\sqrt{A-2\sqrt{B}}=\sqrt{a}-\sqrt{b}
a>b>0になっていないと成り立たないので,必ずa>b>0になっていることを確認しましょう。
ルートの前に2がない場合は,2を作り出そう
二重根号の中のルートの前が2がついてないときはどうするの?
二重根号の公式は,ルートの中に”2\sqrt{B}“がないといけないのですが,都合よくいつも2があるわけではありません。
ここからは,ルートの中に2がない場合の解き方を紹介します。
ルートの表現方法で解決できる場合
次の式をそれぞれ,二重根号のない形に直しなさい。
(1)\sqrt{4+\sqrt{12}}
(2)\sqrt{9-4\sqrt{5}}
ルートの前が2になっていませんが,これは見掛け倒し。それぞれ
\sqrt{12}=2\sqrt{3},4\sqrt{5}=2\sqrt{20}
ってすれば,公式が使えます。
(1)
\begin{aligned} \sqrt{4+\sqrt{12}}&=\sqrt{4+2\sqrt{3}}\\\\ &=\sqrt{(3+1)+2\sqrt{3\cdot1}}\\\\ &=\sqrt{3}+\sqrt{1}\\\\ &=\sqrt{3}+1 \end{aligned}
(2)
\begin{aligned} \sqrt{9-4\sqrt{5}}&=\sqrt{9-2\sqrt{20}}\\\\ &=\sqrt{(5+4)-2\sqrt{5\cdot4}}\\\\ &=\sqrt{5}-\sqrt{4}\\\\ &=\sqrt{5}-2 \end{aligned}
2で割って,2を作り出すパターン
\sqrt{2+\sqrt{3}} を二重根号のない形で表しなさい。
ルートの中が3なので,ルートの前に2を出すことができません。
この場合は,分母2の分数の形にして,無理やり2を作り出します。
\begin{aligned} \sqrt{2+\sqrt{3}} &=\sqrt{\cfrac{4+2\sqrt{3}}{2}}\\\\ &=\cfrac{\sqrt{4+2\sqrt{3}}}{\sqrt{2}}\\\\ &=\cfrac{\sqrt{3}+\sqrt{1}}{\sqrt{2}}\\\\ &=\cfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{2} \end{aligned}
ルートの中で無理やり分母に2をつけると,分子も2倍されるので,分子が二重根号を外せる形になるというわけ。
最後に分母の有理化をしたほうがよいでしょう。
2つの数が見つからない場合は,方程式を解く
二重根号のパターンは以上です。
おまけではありますが,こんな問題は解けますか?
\sqrt{25+2\sqrt{126}}を,二重根号のない形で表しなさい。
たして25,かけて126になる2つの数なんて,すぐ見つからないよ…
二重根号の中の数が大きくて,aとbがすぐに見つからないことがあります。
パッと見つからない場合は,計算で求めましょう。
たして25,かけて126なので,連立方程式を作って解くことができそうです。
\left\{ \begin{aligned} a+b&=25&\cdots①\\\\ ab&=126&\cdots② \end{aligned} \right.
①より,b=25-a
②に代入して,
\begin{aligned} & a(25-a)=126\\\\ \Leftrightarrow & a^2-25a+126=0 \end{aligned}
これを因数分解すればaを求めることができます。
この因数分解は難しいっしょ。
因数分解が難しい場合は,解の公式で機械的に求めましょう。
そもそも因数分解(たすきがけ)できるなら,足して25・かけて126の数がみつかるわけでして…
解の公式を用いて,
\begin{aligned} a&=\cfrac{-(-25)\pm\sqrt{25^2-4\cdot 1\cdot 126}}{2\cdot 1}\\\\ &=\cfrac{25\pm\sqrt{625-504}}{2}\\\\ &=\cfrac{25\pm\sqrt{121}}{2}\\\\ &=\cfrac{25\pm 11}{2}\\\\ &=18,7 \end{aligned}
a=18のとき,b=25-18=7,
a=7のとき,b=25-7=18
ですが,a>bなので,
a=18,b=7とわかりました。
これを用いて二重根号をはずしましょう。
\begin{aligned} \sqrt{25+2\sqrt{126}}&=\sqrt{18}+\sqrt{7}\\\\ &=3\sqrt{2}+\sqrt{7} \end{aligned}
a,bの値をまとめてみると,こんな感じになります。
\sqrt{A\pm2\sqrt{B}}=\sqrt{a}\pm\sqrt{b}が成り立つときのa,b(a>b)は,
a=\cfrac{-A+\sqrt{A^2-4B}}{2},b=\cfrac{-A-\sqrt{A^2-4B}}{2}
二重根号が外せる条件
二重根号が外せないことはあるの?
二重根号を外すときは,たしてA,かけてBとなるような2つの数a,bを見つける必要がありました。
ということは,そのaとbが存在しなければ二重根号は外せないし,存在するとしても無理数(ルートのついた数)だったら,二重根号のままになってしまいます。
つまり,たしてA,かけてBになるaとbが有理数のとき,二重根号をはずすことができるのです。
有理数になることを調べる方法はあるの?
「解の公式」に注目しましょう。
a,bの値は,例題3でやったように,一般的に
\cfrac{-A\pm\sqrt{A^2-4B}}{2}
と表せるんでした。
これが有理数(ルートがない形)になるためには,\sqrt{A^2-4B}のルートが消える,つまり,ルートの中身A^2-4Bが自然数の2乗(平方数)になっている必要があります。
例えば,\sqrt{10-2\sqrt{24}}だったら,A=10,B=24なので,
A^2-4B=10^2-4\cdot24=100-96=4
で,4=2^2(平方数)なので,\sqrt{A^2-4B}はルートのない形(有理数)になる,つまりa,bも有理数になって,無事に二重根号が外せます。
実際に,a=6,b=4のときにa+b=10,ab=24になるので,
\sqrt{10-2\sqrt{24}}=\sqrt{6}-\sqrt{4}=\sqrt{6}-2
ってできます。
一方,例えば\sqrt{9-2\sqrt{19}}だと,A=9,B=19なので,
A^2-4B=9^2-4\cdot19=81-76=5
であり,\sqrt{A^2-4B}=\sqrt{5}で,無理数になってしまう。つまりa,bも無理数になって,二重根号が外せません。
ということで,二重根号が外せる条件は次のようになります。
\sqrt{A\pm2{B}}の二重根号が外せるのは,
A^2-4Bが平方数のとき。
ただ,「二重根号を外しなさい」という問題のときに,二重根号を外せない式を出してくる先生もそうそういないので,基本的には外せるものと思っておいて大丈夫です。
別の問題の途中に二重根号が出てきたときは,外れるものなのか試すのはアリかも。
まとめ
今回は,二重根号を解説しました。
二重根号は,\sqrt{A\pm\color{red}{2}\sqrt{b}}の形になっていないと,正しく外せないことをしっかり覚えておきましょう。
また,公式の成り立ち(\sqrt{a}+\sqrt{b}を2乗した)も知っておくと,理解・暗記の助けになるのでおすすめです。
二重根号の登場頻度は決して高くないですが,いざというときに困らないためにも,基本的な対応方法は身につけてお来ましょう!
このブログでは,自分で勉強しているとき,つまづきやすいポイントを解説。
「かゆいところに手が届く」情報を発信しています。
自分で勉強する際にオススメの参考書や,勉強が楽しくなる文房具も紹介していますので,よろしければご覧ください!