合同式って,知っていますか?
イコールのかわりに合同の記号(三本線)を使って,
a\equiv b\pmod m
のような式のことをいいます。
習った覚えないです。
習ってない人も多い合同式。教科書でも「発展」や「研究」のような扱いで,大きくは取り上げられません。
また,合同式を使わないと解けない問題というのは基本的にありません。知らなくても大学入試をクリアすることはできます。
ですが,予備校の解答速報で,合同式を平気で使ってくるケースもあるなど,意味や使い方をわかっておいて損はないと思います。
さらに,合同式を使うことで計算が大幅に楽になる問題もあります。
この機会に合同式の性質と利用法をマスターして,ドヤ顔でつかってやりましょう!
粗茶
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- 指導歴14年
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合同とは,余りが等しいということ。
合同式の定義
合同式の定義は,次のような感じです。
「aをmで割った余り」と,「bをmで割った余り」が等しいとき,
「aとbはmを法として合同である」といい,
a\equiv b \pmod m
と書きます。
(mod m)までがワンセットです。
「a ごうどう b モッド m」と発音されます。
合同式の具体例
例えば,25を4で割った余りと,17を4で割った余りは,どちらも1で等しいので,
「25と17は4を法として合同である」といって,
25≡17(mod 4)
と書けます。
合同式の性質
合同式は,等式と同じように,足し算・引き算・掛け算と,累乗もできます。
割り算については,条件付きでできます。
a\equiv b\pmod m,c\equiv d\pmod mのとき,
- a+c\equiv b+d\pmod m
- a-c\equiv b-d\pmod m
- ac\equiv bd\pmod m
- \color{red}kと\color{red}mが互いに素のとき,ka\equiv kb\Leftrightarrow a\equiv b \pmod m
- a^n\equiv b^n\pmod m
合同式の和と差
a\equiv b\pmod m,c\equiv d\pmod mのとき,
辺々を足して,a+c\equiv b+d\pmod m,
辺々を引いて,a-c\equiv b-d\pmod m
が成り立ちます。
証明
aをmで割った余りとbをmで割った余りは等しいので,どちらもr_1とおけて,
cをmで割った余りとdをmで割った余りは等しいので,どちらもr_2とおける。
ということで,a,b,c,dは次のように表せる。
a=ma'+r_1
b=mb'+r_1
c=mc'+r_2
d=md'+r_2
これらを用いると,
a+c=ma'+r_1+mc'+r_2=m(a'+c')+r_1+r_2,
b+d=mb'+r_1+md'+r_2=m(b'+d')+r_1+r_2
で,mの倍数でない部分がr_1+r_2で共通なので,a+cをmで割った余りと,b+dをmで割った余りは同じで,いずれも「r_1+r_2をmで割った余り」である。
つまり,
a+c\equiv b+d\pmod m
が成り立つ。
※引き算も同じなので省略
足し算と引き算については,等式と同じように移項することもできるってことです。
合同式の積
a\equiv b\pmod m,c\equiv d\pmod mのとき,
辺々をかけて,ac\equiv bd\pmod m
が成り立ちます。
証明
aをmで割った余りとbをmで割った余りは等しいので,どちらもr_1とおけて,
cをmで割った余りとdをmで割った余りは等しいので,どちらもr_2とおける。
ということで,a,b,c,dは次のように表せる。
a=ma'+r_1
b=mb'+r_1
c=mc'+r_2
d=md'+r_2
これらを用いると,
ac=(ma'+r_1)(mc'+r_2)=m(ma'c'+r_1c'+r_2a')+r_1r_2,
bd=(mb'+r_1)(md'+r_2)=m(mb'd'+r_1d'+r_2b')+r_1r_2,
で,mの倍数でない部分がr_1r_2で共通なので,acをmで割った余りと,bdをmで割った余りは同じで,いずれも「r_1r_2をmで割った余り」である。
つまり,
ac\equiv bd\pmod m
が成り立つ。
掛け算に関しても,等式と同じように扱うことができます。
合同式の両辺の割り算
a\equiv b\pmod mについて,
k(割る数)とm(合同式の法)が互いに素のときだけ,
ka\equiv kb\Leftrightarrow a\equiv b \pmod m
が成り立つ,つまり両辺の割り算ができます。
kとmが互いに素でないとき,合同式が成り立たない場合があることを,具体例で示しておきます。
例えば,
75と25は10で割った余りが5で等しいので,
75\equiv 25\pmod {10}
と書けます。
両辺を25(10と互いに素ではない)で割ると,左辺は3,右辺は1で,10で割った余りが異なります。
つまり,両辺を25で割った後は,合同式が成り立たなくなってしまうのです。
合同式の両辺を割り算するときは,割る数と法が互いに素であることを確認してからにしましょう。
ちゃんとした説明
ka\equiv kb\pmod m
⇔ ka-kb\equiv 0\pmod m
⇔ k(a-b)\equiv 0\pmod m
つまり,k(a-b)はmの倍数,
よって,k(a-b)=mX…(*)
(Xは何かの数字)
と表される。
(ⅰ)kとmが互いに素のとき
kはmの倍数ではないので,a-bがmの倍数である。
つまり,
a-b\equiv 0\pmod m
⇔ a\equiv b\pmod m
ということで,両辺の割り算が可能である。
(ⅱ)kとmが互いに素でないとき
kとmは2以上の公約数gを持つので,
k=k'g,m=m'g
(k',m'は互いに素)
とおくことができる。
(*)は両辺をgで割り切ることができて,
\cfrac{k}{g}(a-b)=\cfrac{m}{g}X
⇔ k'(a-b)=m'X
ここでk'とm'は互いに素なので,
a-bはm'の倍数だから,
a-b\equiv 0\pmod {m'}
⇔ a\equiv b \pmod {m'}
ということで,合同式の法が変わってしまい,mで割った余りが等しいことが保証されなくなってしまうのです。
合同式の累乗
a\equiv b\pmod mのとき,
a^n\equiv b^n\pmod m
が成り立ちます。
理由
合同式の積を利用すると,理由がわかります。
a\equiv b\pmod mなので,
a\cdot a\equiv b\cdot b\pmod m
は成り立ちます。さらに,
a\cdot a\cdot a\equiv b\cdot b\cdot b\pmod m
も成り立ちます,これは永遠に繰り返すことができるので,
かける回数をn回にして,
a\cdot a\cdots a\equiv b\cdot b\cdots b\pmod m
つまり,
a^n\equiv b^n\pmod m
もいけるよ。っていうお話。
等式と同じように,両辺をn乗しても同じになるということです。
合同式が使えると便利な問題
合同式の存在はわかったけど,実際の問題でどうやって使えるの?
ここからは,合同式を使うことで計算が簡単になる場合を紹介しましょう。
合同式の現実的な使い方は「余りへの置き換え」
合同式の定義は最初に述べたとおりですが,現実的には「余りに置き換える」使い方が有効です。
aをmで割った余りがr(r<m)であることを,
a\equiv r \pmod m
と表記する場合が多い。
例えば,「aを5で割った余りが2」であるとき,
a\equiv 2 \pmod 5
と書くことができます。
実際の問題を扱いながら,合同式の使い方を紹介しましょう。
累乗の余り
まずは,累乗の数を何かで割った余りを求めるときの計算です。
15^{2023}を7で割った余りを求めよ。
2023乗を計算することは不可能ですが,余りを求めればよいだけなので,余りに注目した計算をすればOKです。
標準的解答
15=7\cdot 2+1より,
\begin{aligned} &15^{2023}\\\\ =&(7\cdot 2+1)^{2023}\\\\ =&{\color{red}_{2023}{\rm C}_0(7\cdot 2)^{2023}+_{2023}{\rm C}_1(7\cdot 2)^{2022}\cdot 1^1+_{2023}{\rm C}_2(7\cdot 2)^{2021}\cdot 1^2+\cdots }+_{2023}{\rm C}_{2023}\cdot 1^{2023}\\\\ =&{\color{red}\text{(7の倍数)}}+1^{2023}\\\\ \end{aligned}
二項定理で展開しています。
よって,求める余りは,1^{2023}=1を7で割った余りなので,1 …(答)
合同式を使った解答
本質的には変わらないのですが,合同式を用いると,余りだけに注目できるので,計算が易しくなります。
15を7で割った余りは1,つまり,
15\equiv 1\pmod 7 なので,
15^{2023}\equiv 1^{2023}=1\pmod 7
15^{2023}\equiv 1 \pmod 7
なので,15^{2023}を7で割った余りは1 …(答)
余りが1になるときでないと使いづらいですが,余りだけに注目すればいいという意味では,合同式はとても有効です。
和や積の余りの問題
また,余りを扱った問題でも,合同式を導入することで早く解くことができます。
a,bは整数とする。
aを7で割った余りは3,bを7で割った余りは4である。
(1)a+2bを7で割った余りを求めよ。
(2)abを7で割った余りを求めよ。
標準的解答
a=7m+3,b=7n+4とおける。
(1) a+2b
=7m+3+2(7n+4)
=7m+14n+11
=7m+14n+7+4
=7(m+2n+1)+\color{red}4
よって,求める余りは\color{red}4 …(答)
(2) ab
=(7m+3)(7n+4)
=49mn+28m+21n+12
=49mn+28m+21n+7+5
=7(7mn+4m+3n+1)+\color{red}5
よって,求める余りは\color{red}5 …(答)
よくある問題で,特に悪いところはないのですが,mとかnがついている項は必ず7の倍数だから,余りを求める時には関係ありません。
そこで合同式を使うと,余りの部分だけに注目できるので,余分な計算をしなくてすみます。
合同式を使った解答
毎回(mod 7)って書くのが面倒な場合は,最初に合同式の法を宣言しておくと,(mod 7)を省略できます。
合同式は7を法とする。
a\equiv 3,b\equiv 4
とおける。
(1) a+2b
\equiv 3+2\cdot 4
=11
\equiv 4
よって,求める余りは\red 4 …(答)
(2) ab
\equiv 3\cdot 4
=12
\equiv 5
よって,求める余りは\red 5…(答)
合同式を使うと,余りにだけ注目できるので,計算も簡潔にすみます。
2元1次不定方程式を合同式で解く
2元1次方程式は,合同式を用いて解くこともできます。
方程式7x-13y=1をみたす整数x,yの組を求めよ。
よくある方法
ユークリッドの互除法を用いる。
13=7\cdot 1+6 …①
7=6\cdot 1+1 …②
①より,6=13-7\cdot 1 …①’
②より,1=7-6\cdot 1
①’を代入して,
1=7-(13-7\cdot 1)\cdot 1
⇔7\cdot 2-13\cdot 1=1 …(*)
元の式から(*)を引いて,
7(x-2)-13(y-1)=0
⇔7(x-2)=13(y-1)
ここで右辺は13の倍数である。等式が成り立つためには左辺も13の倍数でなくてはならない。
7と13は互いに素であり,7は13の倍数ではないので,x-2が13の倍数である。
よって,x-2=13k(kは整数)とおくことができ,上の式に代入することで,
y-1=7k も成り立つ。
よって,(x,y)=(13k+2,7k+1),ただしkは整数 …(答)
一般的な方法を書きました。やったことのある人は,x,yの組を1つ見つけるのが面倒に思うことでしょう。
実は,合同式を使うことで,いきなり一般的な答えを求めることができてしまいます。
合同式を用いて解く方法
7x-13y=1
⇔ 13y=7x-1
ここで,7x-1は,7で割ると6余る数なので,
7x-1\equiv 6\pmod 7
って書けます。
7x-1と13yは等しいので,
13y\equiv 6\pmod 7…(*)
も成り立ちます。
これをうまく変形して,yの係数が1になるようにします。
13yを7で割った余りは,13y-7yを7で割った余りは等しいので,7の倍数を足したり引いたりしても合同なので,
13y\equiv 13y-7y\equiv 6y\pmod 7
これを(*)の左辺に代入(という表現でいいのか怪しい)して,
6y\equiv 6\pmod 7
両辺を6(7と互いに素)で割って,
y\equiv 1\pmod 7
つまり,yを7で割った余りが1ということなので,
\color{red}y=7k+1(kは整数)
である。
これを最初の式に代入して,
7x-13(7k+1)=1
⇔ 7x=13\cdot 7k+14
∴ \color{red}x=13k+2(kは整数)
合同式を使うと,いきなり答えにたどり着くことができますが,計算に慣れる必要はありそうですね。
合同式を利用して,効率よく解答を作ろう
この記事では,合同式の性質と,実際の問題への利用方法を紹介しました。
要点をまとめると以下のとおりです。
- 合同とは,余りが等しいという関係のこと。
- 合同式は,方程式のように移項や累乗ができるが,割り算だけは注意が必要。
- 余りに関する問題を解く際に,合同式が力を発揮する。
初めは慣れないかと思いますが,使い方をマスターすると,問題を解く上での強力な武器になります。
数学の知識で,知ってて損なことはありませんので,ぜひ身につけてほしいところです。
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