剰余の定理を利用した,あまりの問題をやります。
余りをax+bなどとおいて,数字を代入していけば解ける形の問題は,すぐにできるようになります。
しかし,世の中には余りをax+bなどとおいたところで解けない形式の問題が存在します。
問題集などの解説を読んでもいまいちピンとこないことが多いので,なるべく詳しく説明したいと思います。

粗茶
- 文系に特化して数学を分かりやすく教える高校数学の専門家
- 指導歴15年
- 数学が苦手で何から始めたらいいか分からない文系高校生の悩みを解決するコンテンツを展開しています。
剰余の定理とは
剰余の定理とは,こちらです。
整式 P(x) を x\color{red}-\alpha で割ったときのあまりは P({\color{red}\alpha})
1次式で割ったあまりをしりたいとき,割り算をしなくても,あまりがわかっちゃうという,素敵な定理です。
理由はこんな感じです。
P(x)をx-\alphaで割ったときの商をQ(x),あまりをRとすると,
P(x)=(x-\alpha)Q(x)+R

これは小学校の5年ぐらいの算数でも少しやってます。
これにx=\alphaを代入すると,
P(\alpha)=(\alpha-\alpha)Q(x)+R=R
となるので,P(\alpha)=Rが成り立つ。
つまり,x=\alphaを代入すると,あまりがわかるということ。
あまりの問題(頻出な方)
ここからは,剰余の定理を利用した,実際の問題を解いていきます。
とりあえずは,スタンダードな方をやっていきます。これはこれで重要。
整式P(x)をx-1で割ったときの余りは5,x+2で割ったときの余りは-1である。このとき,P(x)をx^2+x-2で割ったときの余りを求めよ。

これはできるやつなんですよ。これは。
x^2+x-2=(x-1)(x+2)になることに注目して,解いていきます。
P(x)をx^2+x-2すなわち(x-1)(x+2)で割ったときの商をQ(x),余りをax+bとすると,次の式が成り立つ。

今回は2次式(x^2+x-2)で割っているので,余りは1次以下の式になります。そこで,余りをax+bをおきました。
P(x)=(x-1)(x+2)Q(x)+ax+b
この式の両辺にx=1,x=-2を代入すると,
P(1)=a+b…①,P(-2)=-2a+b…②
また,P(x)をx-1で割ったときの余りは5,x+2で割ったときの余りは-1だったので,
P(1)=5…③,P(-2)=-1…④
①と③,②と④はそれぞれ同じものを表しているので,
a+b=5,-2a+b=-1
この連立方程式を解いて,
a=2,b=3
よって,求める余りは,2x+3…(答)
そうなんですよ,これはみんなできるやつなんですよ。
これの類題として出される問題があって,これが全然類題になってないぐらい難しいことになってるんですよ。
あまりの問題(難しい方)
多くの高校生がお悩みの,難しいバージョンがこちらです。
整式P(x)をx^2+1で割るとx+4余り,x-2で割ると1余るという。このとき,P(x)を(x^2+1)(x-2)で割ったときの余りを求めよ。

これこれ!解説見ても意味不明なやつ!
「x-2で割ると1余る」とのことなので,P(2)=1はつくれるのですが,それ以上の情報が得られません。
「x^2+1で割るとx+4余る」っていうのをどう使っていけばいいのかもわかりませんね。
このタイプの問題は,先程のスタンダードな方とは,根本的に考え方が違っているとお考えください。
P(x)を(x^2+1)(x-2)で割った商をQ(x),余りをR(x)とおくと,
P(x)=(x^2+1)(x-2)Q(x)+R(x)…①

今回は3次式で割っているので,余りは2次以下だからax^2+bx+cなのですが,a,b,cの式が3つも作れないので,この置き方はやりません。
この手の問題の解答を見ると,
P(x)をx^2+1で割ったときの余りは,R(x)をx^2+1で割ったときの余りが等しいから,
R(x)=a(x^2+1)+x+4とおける
って書いてあるのですが,なんのこっちゃさっぱりだと思います。
この謎を明かすために,すこしずつ説明していきますね。
x^2+1で割ったあまりがx+4であることについて
まずは,「x^2+1で割ったあまりがx+4である」を考えます。
このとき,①のR(x)は,どんな式になるでしょうか?
「x^2+1で割ったあまりがx+4」って言っているので,R(x)はx+4 という可能性はあります。
仮に,R(x)=x+4とすると,①は,

のようになって,P(x)をx^2+1で割ったあまりは,たしかにx+4になっています。
ですが,R(x)はx+4以外でもいけます。
たとえは,x+4にx^2+1を足して,
R(x)=x^2+1+x+4とすると,①は,

となって,やはりP(x)をx^2+1で割ったあまりは,x+4になっています。
今は,x+4に(x^2+1)を1つ足しましたが,これは2つたしても,3つでも,52個でも,何個足したものをR(x)としても,P(x)をx^2+1で割ったあまりは,x+4になりますよね。
よって,R(x)=a(x^2+1)+x+4 …②
と書くことができます。
②の式をよく見ると,R(x)をx^2+1で割った余りがx+4になっていることがわかります。
これが,冒頭で言っていた,「P(x)をx^2+1で割ったときの余りと,R(x)をx^2+1で割ったときの余りが等しい」の正体になります。

「x-2で割ったあまりが1」と合わせる
「x-2で割ったあまりが1」については,剰余の定理を使います。
剰余の定理から,
P(2)=(2^2+1)(2-2)Q(x)+R(2)=R(2)
R(2)=1,つまりR(x)にx=2を代入すると1になるということ。
ここで,②にx=2を代入して,
R(2)=a(2^2+1)+2+4=5a+6
これが1になるので,
5a+6=1 \therefore a=-1
②に代入して,求める余りは,
R(x)=-(x^2+1)+x+4=-x^2+x+3 …(答)
できました。
例題1とは全く別物だと思って構えるようにしていきましょう。
まとめ
剰余の定理を用いた,余りの問題を2パターンやってみました。
例題1の方は簡単にできるようになりますが,例題2のパターンが非常に厄介です。
よく似た問題には見えますが,まったく別物だと思って対応していきましょう。
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