今回は「円の接線の方程式」のお話です。
円の接線の求め方って,なんだか文字が多くなってごちゃごちゃすると思っていませんか?
実は,円の接線の方程式は,文字1つをおくことで求めることができてしまいます。
・円の接線の方程式を,1つの文字をおくだけで求めることができる。
粗茶
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予備知識
円の接線とは
円の接線とは,円に接している(1点を共有する)直線のことです。
円の中心と接点を結んだ直線は,接線と垂直に交わるという性質があります。
直線の方程式
直線の方程式は,「傾き」と「通る点」がわかれば,求めることができます。
傾きがmで点(p,q)を通る直線の方程式は
y-q=m(x-p)
例えば,傾きが2で,点(1,3)を通る直線は,
y-3=2(x-1)
\therefore y=2x+1
のように求められます。
円の接線を求めよう
それでは,円の接線を求めていきましょう。
原点が中心の円で,接点がわかっている場合
もっとも易しいパターンです。
円 x^2+y^2=25の、点(4,3)における接線の方程式を求めよ。
「点(4,3)における」とは、「点(4,3)が接点ですよ」ということなので,図はこんな感じになります。
原点が中心の円で,接点がわかっている場合は、文字をおく必要もありません。
円の中心と接点を結ぶ直線(上図の青い線)の傾きは\cfrac{3}{4}
これが接線と垂直になっていることから、接線の傾きを求めることができます。
ここで使う公式がこちら。
傾きmの直線と傾きnの直線が垂直に交わるとき、
mn=-1 すなわち、n=-\cfrac{1}{m}
傾きを逆数にしてマイナス倍すると、垂直な直線の傾きになります。
今回の場合は、青い線の傾きが\cfrac{3}{4} なので、接線の傾きは-\cfrac{4}{3}
もちろん接点(4,3)を通ります。
というわけで求める接線は、傾き-\cfrac{4}{3}で、(4,3)を通る直線なので、
y-3=-\cfrac{4}{3}(x-4)
よって,y=-\cfrac{4}{3}x+\cfrac{25}{3} …(答)
ただ,原点が中心の円の接線については,次の公式があります。
円x^2+y^2=r^2の,点(a,b)における接線の方程式は,
ax+by=r^2
今回の場合だと,円の式がx^2+y^2=25,接点が(4,3)だったので,公式にあてはめると,接線の方程式は,
4x+3y=25
よって,y=-\cfrac{4}{3}x+\cfrac{25}{3}
となります。さっきと同じです。
中心が原点の場合については,この公式でやったほうが早いことが多いです。
接点がわからないけど,他の点がわかっている場合
大抵の問題は,接点はわかっておらず,代わりに他の通る点が与えられています。
点(3,1)を通り,円x^2+y^2=2に接する直線の方程式を求めよ。
接点がわかっていない場合は,傾きをmとおいて,とりあえず直線の式をつくります。
接線の傾きをmとすると,求める接線は,
点(3,1)を通り,傾きmの直線だから,
y-1=m(x-3)すなわち,y=mx-3m+1 …①
となります。
ここで必殺!「点と直線の距離」公式が登場します。
点(p,q)と直線ax+by+c=0の距離をdとすると,
d=\cfrac{|ap+bq+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}
実は,円の中心と接線の距離は,円の半径と同じになります。
つまり「円の中心(0,0)と接線mx-y-3m+1=0の距離」=「半径」という方程式を作って解けば,mがわかって,接線が求められるという流れができあがります。
点と直線の距離の公式を使うとき,直線の式は必ずax+by+c=0の形で使います。
今回も,①の式を整理して,mx-y-3m+1=0という形に直してから使ってね。
円の中心と接線の距離は,円の半径に等しいので,
\cfrac{|m\cdot 0-0-3m+1|}{\sqrt{m^2+1^2}}=\sqrt{2}
両辺を\sqrt{m^2+1}倍しつつ計算して,
|-3m+1|=\sqrt{2(m^2+1)}「絶対値」=「ルート」のときは,両辺が正の数なので,両辺を2乗しても問題ありません。
両辺を2乗して,
(-3m+1)^2=2(m^2+1)
\Leftrightarrow 9m^2-6m+1=2m^2+2
\Leftrightarrow 7m^2-6m-1=0
\Leftrightarrow (7m+1)(m-1)=0
\therefore m=-\cfrac{1}{7},1
それぞれを①に代入して,求める接線は,
y=-\cfrac{1}{7}x+\cfrac{10}{7},y=x-2 …(答)
ここで紹介した方法ではなく,接点を(x_1,y_1)などとおいて,連立方程式をつくる方法が常套手段とされていますが,連立方程式がめんどくさいので,個人的には傾きをmと置く方法をおすすめします。
ただし,傾きをmとおく方法には,1つだけデメリットがあります。
円外の点から引いた接線は必ず2本あるので,mも2つ出てくるはずです。
しかし,問題によってはmが1つしか出てこない場合があります。
mが1つしか出ないときは,1つの接線の傾きが定義できない,つまりy軸に平行な直線になっているということです。
例えばこんな感じ。
mが1つしか求まらなかった場合は,上図の赤線のような接線が存在しているので,図を描いて示しておきましょう。
原点以外が中心の円
最もめんどうなパターンとされています。
しかし,傾きをmとおく方法を使えば,中心がどこにあってもやり方は変わりません。
点(2,4)を通り,円(x+2)^2 +(y-2)^2 =10に接する直線の方程式を求めよ。
例題2と同じように,傾きをmとおいて,接線の方程式を作ります。
接線の傾きをmとすると,求める接線は,
点(2,4)を通り,傾きmの直線だから,
y-4=m(x-2)すなわち,mx-y-2m+4=0 …①
このあと「点と直線の距離」の公式をつかうので,最初からax+by+c=0の形にしておきました。
続いて,「円の中心(-2,2)と接線mx-y-2m+4=0の距離」=「半径」という方程式を作って解けばOK。
中心の座標が原点ではなく(-2,2)になっただけで,やり方は同じです。
円の中心と接線の距離は,円の半径に等しいので,
\cfrac{|m\cdot(-2)-2-2m+4|}{\sqrt{m^2+1^2}}=\sqrt{10}
両辺を\sqrt{m^2+1}倍しつつ計算して,
|-4m+2|=\sqrt{10(m^2+1)}両辺を2乗して,
(-4m+2)^2=10(m^2+1)
\Leftrightarrow 16m^2-16m+4=10m^2+10
\Leftrightarrow 3m^2-8m-3=0
\Leftrightarrow (3m+1)(m-3)=0
\therefore m=-\cfrac{1}{3},3
m=-\cfrac{1}{3}のとき,①は,
-\cfrac{1}{3}x-y+\cfrac{14}{3}
\Leftrightarrow x+3y-14=0
m=3のとき,①は,
3x-y-2=0
よって,求める接線は,
x+3y-14=0,3x-y-2=0 …(答)
一応,中心が原点ではない円の接線の公式というのもあるんですが…
円(x-p)^2+(y-q)^2=r^2上の点(a,b)における接線の方程式は
(a-p)(x-p)+(b-q)(y-q)=r^2
覚えてもいいと思うんですが,結局接点を文字でおかないといけないので,連立方程式を解くはめになります。
べ,別にいいんだけど連立方程式でも。
まとめ
円の接線の求め方のうち,おく文字をできるだけ少なくするやり方を紹介しました。
- 接線の傾きをmとおいて,接線の方程式をつくる。
- 「中心と接線の距離」=「半径」で,mの方程式をつくって解く
- mを接線の式に代入して完成
- mが1つしか出ないときは,1つの接線がy軸に平行なので注意
数Ⅱは単元が多いので,暗記することはできるだけ少なくして,効率よく習得していきましょう!
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