命題とか,必要条件とか,十分条件とか,何が何だか…
数学の授業で「命題と真偽」「逆・裏・対偶」「必要条件・十分条件」などを聞いて、さっぱりわからない…
そんな悩みを抱えていませんか?
この記事では、命題とは何か、どうやって命題の真偽を判断するのかをわかりやすく解説します。
具体例や図を使って、逆・裏・対偶の関係や必要条件・十分条件の問題もスッキリ整理します。
この記事を読むことで、命題の基礎をしっかりと身につけ、テストで高得点を目指せるようになります。
苦手意識を払拭し、自信を持って問題に取り組めるように頑張りましょう!
- 命題の定義と真偽の判定方法
- 逆・裏・対偶の意味と具体例
- 必要条件と十分条件の問題の解き方
粗茶
- 文系に特化して数学を分かりやすく教える高校数学の専門家
- 指導歴14年
- 数学が苦手で何から始めたらいいか分からない文系高校生の悩みを解決するコンテンツを展開しています。
数学の問題集の進め方について、noteでも発信しています。よろしければご覧ください!
命題と真偽
まずは命題とはなにか,そして命題の真偽を判定する方法を解説します。
命題とは
命題とは、正しい(真)か間違っている(偽)かを客観的に判断できる文や式のことです。
数学では通常,「●●ならば▲▲である」という形の命題を扱います。
「ならば」の代わりに「⇒」の記号を使って,「●●⇒▲▲」と書くことも多いです。
また,「ならば」の前後にある●●や▲▲の部分のことを条件といいます。
命題の例を少しあげておきます。
- 渋谷区民であるならば,東京都民である。
- 三角形の3つの角がすべて等しいならば,正三角形である。
- 2つの整数a,bがともに偶数ならば,abは偶数である。
例えば最初の命題でいうと「渋谷区民である」と「東京都民である」が条件にあたります。
命題には,数式を使っているものもあれば,数式を使わないものもありますが,正しいか間違っているかを客観的に判断できれば,すべて命題といえます。
そもそも命題になっていない(正しいか間違っているか判断できない)ものが出てくることはないので,命題であることは信じていいと思います。
命題の真と偽
次に,命題が真か偽かを判定する方法を説明します。
正しいのが真で,間違ってるのが偽じゃないの?
だいたいそうなんですが,もう少し厳密に決められています。
命題が真であることと偽であることの意味は次のようになります。
今まで●とか▲で書いていましたが,ここから先は,一般的に使われるpとqを使うことにしますね。
命題「pならばq」が
- 真である=「pが成り立つとき,必ずqが成り立つ」
- 偽である=「pが成り立つときに,qが成り立たないことがある」
pが成り立つとき必ずqが成り立つ場合のみ,「pならばq」は真です。
逆に,pが成り立つがqが成り立たない場合(反例といいます)が1つでもあるときは,「pならばq」は偽となります。
1つ例題を考えてみましょう。
次の命題の真偽を判定しなさい。(※渋谷区は,東京都にしかありません。)
(1)Aさんが渋谷区民であるならば,Aさんは東京都民である。
(2)Aさんが東京都民であるならば,Aさんは渋谷区民である。
(1)の答え
渋谷区は東京都の一部なので,渋谷区民であれば必ず東京都民でもある。ということで,この命題は真。
(2)の答え
(2)は(1)の逆です。
Aさんが東京都民ならば,渋谷区民かもしれないけど,杉並区民かもしれないし,他の自治体の住民かもしれません。
Aさんが東京都民のとき,必ずしも渋谷区民というわけではないので,この命題は偽となります。
命題の真偽と集合
命題の真偽の判定は,集合の包含関係(含む・含まれる)を使うと簡単にできます。
p\Rightarrow qが真のとき,
pを満たす集合とqを満たす集合の包含関係は次のようになる。
小さい方から大きい方に矢印が向かうイメージです。
同じ例題を考えてみましょう。
次の命題の真偽を判定しなさい。
(1)Aさんが渋谷区民であるならば,Aさんは東京都民である。
(2)Aさんが東京都民であるならば,Aさんは渋谷区民である。
「渋谷区民」と「東京都民」の集合の包含関係を図にすると,次のようになります。
「渋谷区民」のほうが「東京都民」よりも小さい集合になるので,
(1)の「渋谷区民⇒東京都民」は真,
(2)の「東京都民⇒渋谷区民」は偽
と,一瞬でわかります。
偽のときに反例をあげる必要がある場合は,「東京都民だけど渋谷区民でない」部分に含まれる例を何か1つあげておきましょう。
上図の色を付けた部分にあてはまる例を1つあげておきましょう。(例えば「Aさんが杉並区民」など)
もうちょっと数学っぽい問題もやってみましょう。
次の命題の真偽を判定しなさい。
(1)自然数nが4の倍数ならば,nは偶数である。
(2)自然数nが奇数ならば,n^2は偶数である。
(1)の答え
「(4の倍数)⇒(偶数)」という命題なので,4の倍数の集合が偶数の集合よりも小さければ真,そうでなければ偽です。
実際に図示してみましょう。
4の倍数も2で割り切れるので,偶数の一種です。
ですが,偶数には2や6のように4で割り切れないものもあります。
よって,2つの集合を図示すると次のようになります。
4の倍数の集合のほうが偶数の集合よりも小さいので,この命題は真です。
(2)の答え
n^2が偶数になるものの集合って,どういうこと?
(2)は,集合で表すのが難しそうですよね。
すべての問題が集合を使って解けるというわけではないので,集合を作りづらい場合は,証明する形で真偽を判定します。
nが奇数のとき,自然数mを用いて,
n=2m-1
と表せます。このときにn^2が偶数になるかどうか,実際に計算してみます。
\begin{array}{lll} n^2&=&(2m-1)^2\\\\ &=&4m^2-4m+1\\\\ &=&2(2m^2-2m)+1 \end{array}
2(2m^2-2m)の部分は2×( )の形をしているので偶数。これに1を足すと奇数になります。
つまり,n^2は奇数ということ。
したがって,「nが奇数ならばn^2は偶数」という命題は正しくないので,偽。
真偽の判定は,できるだけ集合の包含関係を使って解きたいところですが,問題によっては証明するしかない場合もあるので,両方の方法を使い分けられるようにしておきましょう。
逆・裏・対偶
続いて命題の逆・裏・対偶のお話です。
真偽の判定や必要・十分条件の問題でも活用する場面が多いのでしっかり覚えましょう。
逆・裏・対偶と具体例
命題の逆・裏・対偶の定義は次のようになります。
命題「p\Rightarrow q」に対して,
- 「q\Rightarrow p」(順番を入れ替えたもの)を逆
- 「\overline{p}\Rightarrow \overline{q}」(両方を否定したもの)を裏
- 「\overline{q}\Rightarrow \overline{p}」(逆かつ裏)を対偶
といいます。
具体例をやってみましょう。
命題「渋谷区民ならば東京都民である」の逆・裏・対偶を答え,それぞれの真偽を判定せよ。
また渋谷のやつじゃん。まあいいけど。
同じのを使っていくほうがわかりやすいでしょ?そうでもない?
逆
逆は「ならば」の前後を入れ替えたものなので,
「東京都民ならば渋谷区民である」です。
これは例題1でやりましたが,反例「杉並区民」があるので,偽でした。
裏
裏はそれぞれの条件を否定したものなので,
「渋谷区民でなければ,東京都民ではない」
ですが,もちろん渋谷区民以外にも東京都民はいるので,偽です。(反例は「杉並区民」など)
対偶
対偶は,前後を入れ替えて,さらに否定もするので,
「東京都民でなければ,渋谷区民ではない」になります。
渋谷区は東京都にしかない自治体なので,東京都民でなければ当然渋谷区民でもありません。
集合を用いて考えることもできますよ。
東京都民でない人の集合は,図の色を付けた部分。
色を付けた部分には,渋谷区民も入りませんよね。
もとの命題と対偶の真偽は同じ
ここで重要なことは、もとの命題の真偽と対偶の真偽は同じだということ。
つまり、もとの命題が真なら対偶も真、もとの命題が偽なら対偶も偽です。
もとの命題と対偶は同じ意味だと考えてもいいと思います。
この性質を利用すると、命題の真偽を判定しづらいときは、対偶を考えることで解きやすくなることがあります。
nが整数のとき,命題「3n^4+5n^2+nが奇数ならばnも奇数である」の真偽を判定せよ。
3n^4+5n^2+nが奇数っていわれても,どうすれば…
命題の真偽を直接判定しづらいときは,対偶を作って対偶の真偽を判定してみましょう。
対偶「nが偶数ならば3n^4+5n^2+nが偶数」の真偽を調べる。
順番を変えるだけじゃなくて,それぞれを否定する(奇数の否定は偶数)のも忘れずに!
nが偶数のとき,整数kを用いて,n=2kと表せる。
このとき,
\begin{array}{lll} 3n^4+5n^2+n&=&3\cdot(2k)^4+5\cdot(2k)^2+2k\\\\ &=&48k^4+20k^2+2k\\\\ &=&2(24k^4+10k^2+k) \end{array}
であり,3n^4+5n^2+nは偶数である。
偶数は,「2×整数」の形です。
よって,「nが偶数ならば3n^4+5n^2+nが偶数」は真なので,
もとの命題「3n^4+5n^2+nが奇数ならばnも奇数」も真である。
このように,命題の真偽を直接判定しづらい場合は,対偶を使うことを考えてみましょう。
必要条件・十分条件
続きまして,命題の真偽と密接な関わりもつ,必要条件・十分条件について説明します。
何が必要で何が十分かもよくわかんないし,問題をといても全然当たらないんだよね。
日常会話で使う「必要」「十分」という言葉とは少し違うので,ここは腹をくくって暗記しましょう。
必要条件・十分条件の定義
必要条件・十分条件の定義は次の通りです。
「pはqであるための( )条件」という問題が出たとき,
q\Rightarrow pが真のとき,
p,qを満たす集合の包含関係は次のようになり,このとき,
pは(qであるための)必要条件である
といいます。
p\Rightarrow qが真のとき,
p,qを満たす集合の包含関係は次のようになり,このとき,
pは(qであるための)十分条件である
といいます。
p\Rightarrow qが真で,q\Rightarrow pも真のとき
p,qを満たす集合は完全に重なり,このとき,
pは(qであるための)必要十分条件である
といいます。
もちろんqも(pであるための)必要十分条件であり,
「p\Leftrightarrow q」
と書きます。
このことを「pとqが互いに同値である」ともいいます。
2つの条件の大きさを比べて,小さい方を十分条件,大きい方を必要条件といいます。
覚えましょう。
必要条件・十分条件の問題
それでは,必要条件・十分条件の判定を実際の問題で考えていきましょう。
( )にあてはまるものを,あとの①〜④からそれぞれ選びなさい。
(1)渋谷区民であることは東京都民であるための( )。
(2)自然数nが偶数であることは,nが4の倍数であるための( )。
(3)「x=4 かつ y=9」は x+y=13 であるための( )。
(4)「2x-y=3 かつ x+y=3」は「x=2 かつ y=1」であるための( )。
(5)p+q が有理数であることは p,q がともに有理数であるための( )。
①必要条件であるが十分条件ではない
②十分条件であるが必要条件ではない
③必要十分条件である
④必要条件でも十分条件でもない
(1)
渋谷区民であることは東京都民であるための( )。
「渋谷区民」と「東京都民」を比べて,「渋谷区民」が大きいか小さいかを判定します。
命題の主語(〜は)になっている方(今回は「渋谷区民」)が大きいか小さいかどうかを判定します。
すると,「渋谷区民」は小さい方なので,②十分条件だが必要条件ではない。
(2)
自然数nが偶数であることは,nが4の倍数であるための( )。
「nが偶数」と「nが4の倍数」を比べて,「nが偶数」が大きか小さいかを判定します。
すると「nが偶数」のほうが大きいので,①必要条件だが十分条件ではない。
(3)
「x=4 かつ y=9」は x+y=13 であるための( )。
4+9=13ですが,足して13になる(x,y)の組はたくさんありますよね。
図より,「x=4 かつ y=9」は小さい方なので,②十分条件だが必要条件ではない。
(4)
「2x-y=3 かつ x+y=3」は「x=2 かつ y=1」であるための( )。
文字の種類が多くなると,集合を考えづらくなってきます。
集合を考えづらい場合は,「p\Leftrightarrow q」と「q\Leftrightarrow p」のそれぞれの真偽を調べて,必要条件か十分条件かを判断します。
まずは「2x-y=3 かつ x+y=3」⇒「x=2 かつ y=1」について。
\left\{ \begin{array}{lll} 2x-y=3&\cdots①\\\\ x+y=3&\cdots② \end{array} \right.
という連立方程式を解きます。
①+②より,
\begin{array}{lll} &3x=6\\\\ \therefore&x=2 \end{array}
②に代入して,
\begin{array}{lll} &2+y=3\\\\ \therefore&y=1 \end{array}
よって,「2x-y=3 かつ x+y=3」⇒「x=2 かつ y=1」は真。
次に,逆の「x=2 かつ y=1」⇒「2x-y=3 かつ x+y=3」について。
x=2,y=1のとき,
\begin{array}{lll} 2x-y=2\cdot 2-1=3,\\\\ x+y=2+1=3 \end{array}
2x-y=3 と x+y=3 の両方とも成り立つ。
よって「x=2 かつ y=1」⇒「2x-y=3 かつ x+y=3」も真。
両方とも真だったので,③必要十分条件。
(5)
p+q が有理数であることは p,q がともに有理数であるための( )。
これも集合が考えづらそうなので両方向の真偽を考えます。
有理数でない数を無理数といいますが,無理数の代表例に「ルートのついた数」がありますね。
まず「p+q が有理数」⇒「 p,q がともに有理数」については,
反例として「p=\sqrt{2},q=-\sqrt{2}」(どちらも無理数)があるので偽。
逆の「 p,q がともに有理数」⇒「p+q が有理数」については,
有理数と有理数の和は必ず有理数なので,真。
ということで「 p,q がともに有理数」⇒「p+q が有理数」だけが真なので,
「p+q が有理数」は①必要条件だが十分条件ではない。
ということで,必要条件・十分条件の判定問題は,
- 集合が描けそうな場合は集合を書いて,大きさを比較
- 集合を描くのが難しそうなときは,p⇒qとq⇒pの真偽を判定する
という流れで解くのがおすすめです。
くれぐれも勘に頼らないように…
まとめ
この記事では、命題の基本から真偽の判定方法、逆・裏・対偶の概念、そして必要条件・十分条件の問題の解き方まで解説しました。
これらの知識をしっかりと身につけることで、数学の基礎力が大幅に向上し、複雑な問題にも自信を持って取り組めるようになりますよ。
今回学んだ内容をしっかり復習し、実際の問題に挑戦してみてくださいね。
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