毎年高校受験が終わった後に,新高1生に聞かれる質問があります。
数Ⅰ・Ⅱ・Ⅲとか数A・B・Cとかあるみたいだけど,何が違うの?
ずっと指導する側で暮らしていると何の疑問にも思わないわけですが,初めて学習する高校生には,なぜ科目名にローマ数字やらアルファベットやらついているのか疑問に思いますよね?
この記事では,高校で学習する数Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・Cの内容を,学習指導要領の解説とともにまとめてみました。
数Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは積み上げ式,A・B・Cは独立
高校数学の6つの科目の関係性について,簡単に図示すると,こんな感じになります。
数Ⅰ→数Ⅱ→数Ⅲは,学習内容が連続していて,積み上げ式になっています。
ですので,数Ⅰができないと数Ⅱはできないし,数Ⅱができないと数Ⅲができない仕組みになっています。
一方,数A・B・Cは独立していて,それぞれ「数Ⅰを学習していれば学習可能」とされています。
数Aが苦手でも数Bや数Cは得意!という人もいます。
この違いが,ローマ数字とアルファベットの違いとなって現れているのですね。
数学6科目の学習内容
ここからは,各科目に含まれる単元をざっくり紹介します。
数Ⅰの学習内容
数Ⅰは,数と式,図形と計量,二次関数,データの分析という4つの単元から構成されています。
学習指導要領によると,数Ⅰは,
必履修科目として,中学校との接続に配慮するとともに,この科目だけで高等学校数学の履修を終える生徒及び引き続き数学を履修する生徒の双方に配慮した内容で構成し,すべての生徒の数学的に考える資質・能力の基礎を培う。
【数学編 理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 (PDF:5.3MB)
といわれていますので,どんな高校でも数Ⅰだけは必ず勉強することになります。
中学校の延長の計算や二次関数などを中心に,最近プッシュされているデータの分析も数Ⅰで学習します。
数Aの学習内容
数Ⅰとともに高1で学習する数Aですが,学習指導要領では,
「数学Ⅰ」の内容を補完するとともに,数学のよさを認識し,数学的に考える資質・能力を培う。
【数学編 理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 (PDF:5.3MB)
という性質だと言われています。
数Aで扱う単元は,図形の性質,場合の数と確率,数学と人間の活動。
数Ⅰがメインの流れだとすると,すこし毛色の違う単元が並びます。
3つめの「数学と人間の活動」は,おそらくやらない学校が多いと思います。共通テストでも範囲になっていない模様。
数Ⅱの学習内容
多くの高校では高1の途中で数Ⅰは終わり,数Ⅱに入ります。
学習指導要領によると,数Ⅱは,
高等学校数学の根幹をなす内容で構成し,より多くの生徒の数学的に考える 資質・能力を養う。
【数学編 理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 (PDF:5.3MB)
という性質だと言われています。
数Ⅱで扱う単元は,いろいろな式,図形と方程式,指数関数・対数関数,三角関数,微分・積分の考え
の5つで,高校数学の中では最も単元の多い科目になっています。
基本的には数Ⅰで学習したことの発展的な内容が多くなっています。
そして,高校数学のメインともいえる微分積分もここで登場します。
数Bの学習内容
数Ⅱとともに,主に高2で学習するのが数Bです。
学習指導要領によると,数Bは,
「数学Ⅰ」より進んだ内容を含み,数学的な素養を広げるとともに,数学の知識や技能などを活用して問題解決や意思決定をすることなどを通して数学的に考える資質・能力を養う。
【数学編 理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 (PDF:5.3MB)
とされています。
数Bの単元は3つで,数列,統計的な推測,数学と社会生活。
数Aと同様で,「数学と社会生活」はほぼ学校では扱われないと思われます。
数Ⅰが終わっていれば学習可能な雰囲気出ていますが,数列をやるには数Ⅱの指数・対数の知識が必要だったり,統計的な推測をやるには数Aの確率の知識が必要だったりするので,簡単にはいきません。
中でも数列は,割と苦手とする高校生が多いことでも有名です。
数Ⅲの学習内容
基本的には数Ⅲは理系の人だけが学習します。学習指導要領によると,
微分法,積分法の基礎的な内容で構成し,数学に強い興味や関心をもって更に深く学ぼうとする生徒や,将来数学が必要な専門分野に進もうとする生徒の数学的に考える資質・能力を伸ばす。
【数学編 理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 (PDF:5.3MB)
と書かれています。
数Ⅲで扱われる単元は,極限,微分法,積分法の3つ。
理系学部の入試問題の多くは,数Ⅲの範囲から作られます。
数Ⅲのほうが型が決まっているので数ⅡBまでよりも解きやすいという理系高校生の意見も聞かれます。
数Cの学習内容
学習指導要領の改定により,しばらくなくなっていた数Cが復活しました。数Cは,
「数学Ⅰ」より進んだ内容を含み,数学的な素養を広げるとともに,数学的な表現の工夫などを通して数学的に考える資質・能力を養う。
【数学編 理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 (PDF:5.3MB)
という性質があるとのことです。
こちらも数Ⅰが学習条件のようですが,複素数は数Ⅱでならったりするので,数Ⅰの知識だけでいけるかといわれると怪しいですね。
数Cの単元は,ベクトル,平面上の曲線と複素数平面,数学的な表現の工夫の3つです。
「ベクトル」は長年にわたって数Bの科目になっていましたが,今回の学習指導要領の改定で数Cに移動されました。
「数学的な表現の工夫」は,やはり学校では扱われないと思われます。
数Cは理系の人のみが学習するのかと思われていましたが,共通テストの科目に「数C」が含まれることから,文系の人も「ベクトル」は習うのではないかと予想されます。
共通テストでの取り扱い
ここからは,数学の各科目が大学入学共通テストでどのように扱われそうかを解説します。
令和7年(2025年)度入試から,共通テストの数学科目は,
「数学Ⅰ・数学A」と「数学Ⅱ・数学B・数学C」の2科目が主要なものになりそうです。
共通テスト「数学Ⅰ・数学A」の出題範囲
共通テストの「数学Ⅰ・数学A」は,選択問題がなく,全問必答の形式になります。
令和6年度までは数Aの部分は3問から2問選択の形式でしたが,選択の余地が無くなりました。
共通テスト「数学Ⅱ・数学B・数学C」の出題範囲
共通テスト「数学Ⅱ・数学B・数学C」は,数Ⅱの部分は必答,数B・Cの部分は4問(数列・統計的な推測・ベクトル・平面上の曲線と複素数平面)から3問を選択するという形式になります。
「平面上の曲線と複素数平面」は理系向けの内容だと思うので,文系の人は「数列・統計的な推測・ベクトル」の3つの単元を学習することになりそうです。
まとめ
ということで,高校に入ったら学習する数学の科目6つについてまとめました。
- 数Ⅰ→Ⅱ→Ⅲがメインの流れ
- 数A・B・Cはサブ的な単元
という形になっています。
そして,おそらく多くの学校では,
- 理系の人は全科目
- 文系の人は数Ⅰ・A・Ⅱ・Bと,数Cのベクトル
を履修することになりそうですね。
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