2次不等式って,因数分解のときは簡単にできるんだけど,たまに出てくる「解なし」とか「解はすべての実数」になるのが,意味わからん。
2次不等式の問題で「解なし」とか「解はすべての実数」とか「a以外のすべての実数」とか,特殊なパターンになるものが出てくると,手も足も出ない…そんなお悩みはありませんか?
実は,どんな2次不等式でも「平方完成」を使えば解けてしまいます。
特に,「解なし」とか「解はすべての実数」のような特殊なパターンのときに,平方完成が力を発揮します。
この記事では,2次関数を平方完成を用いて解く方法を,さまざまなパターンごとに説明します。
この記事を読めば,どんな形の2次方程式が出ても,もう怖くない!
平方完成も苦手なんですが…
平方完成の手順も説明するので,大丈夫ですよ!
- 平方完成の手順がわかる
- 2次不等式を平方完成で解く方法がわかる
- 「解なし」「解はすべての実数」のようになる2次方程式も,平方完成を使うとシンプルに解ける
粗茶
- 文系に特化して数学を分かりやすく教える高校数学の専門家
- 指導歴14年
- 数学が苦手で何から始めたらいいか分からない文系高校生の悩みを解決するコンテンツを展開しています。
数学の問題集の進め方について、noteでも発信しています。よろしければご覧ください!
平方完成とは
平方完成とは,一般的に,
ax^2+bx+c
の形の式を,
a(x-p)^2+q
の形に変形することをいいます。
a\neq 0です。
平方完成は,2次関数のグラフを描くときに必要になる変形なので,手順をしっかり身につけましょう。
平方完成の手順
平方完成の手順を,具体例を使って説明します。
2x^2-4x+5を平方完成する
x^2の係数があるときは,x^2の係数で最初の2項(x^2とxの項)をくくります。
\begin{array}{ll} &2x^2-4x+5\\\\ =&2\{x^2-2x\}+5 \end{array}
見やすくするために中括弧を使っていますが,普通の括弧でもいいです。
図のように変形します。
展開してもとに戻ることを確認するといいです。
最後に外のカッコ(中括弧)を外して完成です。
\begin{array}{ll} &2\{(x-1)^2-1^2\}+5\\\\ =&2(x-1)^2-2+5\\\\ =&2(x-1)^2+3 \end{array}
x^2+3x+1を平方完成する
x^2の係数が1のときは,手順が少なくなります。
今回はx^2の係数が1なので,あえてくくらなくてもいいですが,わかりやすいようにくくっておきます。
\begin{array}{ll} &x^2+3x+1\\\\ =&\{x^2+3x\}+1 \end{array}
\begin{array}{ll} &\left\{\left(x+\cfrac{3}{2}\right)^2-\left(\cfrac{3}{2}\right)^2\right\}+1\\\\ =&\left(x+\cfrac{3}{2}\right)^2-\left(\cfrac{3}{2}\right)^2+1\\\\ =&\left(x+\cfrac{3}{2}\right)^2-\cfrac{5}{4}\\\\ \end{array}
xの係数が奇数のときは分数が出てくるので,計算がやや複雑になります。
-3x^2+2x+4を平方完成する
x^2の係数が負のときは,符号を間違えやすいですが,手順を守れば大丈夫!
\begin{array}{ll} &-3x^2+2x+4\\\\ =&-3\left\{x^2-\cfrac{2}{3}x\right\}+4 \end{array}
\begin{array}{ll} &-3\left\{\left(x-\cfrac{1}{3}\right)^2-\left(\cfrac{1}{3}\right)^2\right\}+4\\\\ =&-3\left(x-\cfrac{1}{3}\right)^2+3\cdot\left(\cfrac{1}{3}\right)^2+4\\\\ =&-3\left(x-\cfrac{1}{3}\right)^2+\cfrac{13}{3} \end{array}
今は説明用に細かく途中式を書いていますが,慣れたら省略してもOK。
2次不等式を平方完成を使って解く
それでは,2次不等式を平方完成で解いてみます。
準備として,以下の基本的な形をおさえておきましょう。
a\geqq 0のとき,
\left\{ \begin{array}{l} x^2>a \Leftrightarrow x <-\sqrt{a},\sqrt{a} < x\\\\ x^2< a \Leftrightarrow -\sqrt{a}< x < \sqrt{a} \end{array} \right.
2次方程式のノリで
x<\pm a
みたいな書き方はしない(というより意味がわからない)ので,注意しましょう。
因数分解できるときは,因数分解でしょうね。
xの不等式
x^2-x-6<0
を解け。
左辺が因数分解できるので,一般的には因数分解を使います。
【一般的なやりかた】
\begin{array}{rcl} x^2-x-6 &<&0\\\\ (x+2)(x-3)&<&0 \end{array}
\therefore -2< x<3 \cdots(答)
あえて平方完成を用いて解くと,次のようになります。
【平方完成を使うやりかた】
\begin{array}{rcl} x^2-x-6 &<&0\\\\ \left(x-\cfrac{1}{2}\right)^2-\cfrac{1}{4}-6&<&0\\\\ \left(x-\cfrac{1}{2}\right)^2&<&\cfrac{25}{4}\\\\ \end{array}
よって,
\begin{array}{c} -\cfrac{5}{2}< x-\cfrac{1}{2}<\cfrac{5}{2}\\\\\\ \therefore -2< x<3 \end{array}
いやいやいや,こんな風に解く人いないでしょ。
因数分解できるときは平方完成する必要はありません。
そちらのほうが圧倒的に楽ですからね。
平方完成でもできるということをわかってもらえればOK。
解の公式が必要なケースは,平方完成のほうが解答が書きやすいかも
xの不等式
x^2+5x+2\geqq 0
を解け。
これは左辺が因数分解できません。
解の公式で「=0」の解を求めるやり方が一般的でしょうか。
【一般的なやり方】
x^2+5x+2=0
を解の公式で解くと,
x=\cfrac{-5\pm\sqrt{5^2-4\cdot 1\cdot 2}}{2\cdot 1}=\cfrac{-5\pm\sqrt{17}}{2}
なので,不等式は,
x\leqq \cfrac{-5-\sqrt{17}}{2},\cfrac{-5+\sqrt{17}}{2} \leqq x
これは,平方完成でやったほうが書きやすいかも。
【平方完成を使うやり方】
\begin{array}{rcl} x^2+5x+2\geqq 0\\\\ \left(x+\cfrac{5}{2}\right)^2-\cfrac{25}{4}+2\geqq 0\\\\ \left(x+\cfrac{5}{2}\right)^2\geqq\cfrac{13}{4}\\\\ x+\cfrac{5}{2}\leqq-\cfrac{\sqrt{13}}{2},\cfrac{\sqrt{13}}{2}\leqq x+\cfrac{5}{2}\\\\ \therefore x\leqq\cfrac{-5-\sqrt{13}}{2},\cfrac{-5+\sqrt{13}}{2}\leqq x \end{array}
途中で日本語が入らなくてもいけるところは認めますが,短くなってはいない…
今の例のように,答えが分数になるときは,あまり恩恵を感じられませんが,
二次関数の問題で,最初に平方完成で頂点を求める問題があって,そのあとに不等式を解かせるようなパターンの場合は,有効だと思います。
状況に応じて使い分けることが大事!
「解なし」「すべての実数」などになるパターンも暗記せずに解く
「左辺=0」の解が異なる2つの実数にならない場合は,不等式の解が「解なし」とか「すべての実数」とか,特殊な形になります。
「解なし」とか「すべての実数」とか,表になっているのを習ったんだけど,多すぎて覚えられないっす。
表というのは,これです。
不等式だけでも8パターンもあるので,覚えるのはほぼ不可能といえます。
このような状況でも,平方完成して解く方法ならば,暗記せずに解くことができます。
ここで次の事実を確認しておきたい!!
aが実数のとき,常に,
\Large{a^2\geqq 0}
「実数の2乗は必ず0以上」ですね。
言い換えれば,「2乗して負になる実数は存在しない」ということになります。
「2乗は0以上」の性質を使って,特殊パターンの不等式を解いていきます。
xの不等式
x^2-10x+25<0
を解け。
左辺を平方完成して,
(x-5)^2<0\cdots①
(x-5)^2は0以上なので,
①を満たす実数xは存在しない。
以上より,実数解はない…(答)
xの不等式
9x^2-6x+1\leqq 0
を解け。
左辺を平方完成して,
(3x-1)^2\leqq 0\cdots②
(3x-1)^2は0以上なので,
②が成り立つのは(3x-1)^2=0のみ。よって,
\begin{array}{l}(3x-1)^2=0\\\\ 3x-1=0\\\\ \therefore x=\cfrac{1}{3}\cdots(答) \end{array}
xの不等式
x^2-6x+11>0
を解け。
左辺を平方完成して,
\begin{array}{l} (x-3)^2-9+11>0\\\\ (x-3)^2>-2\cdots③ \end{array}
(x-3)^2は必ず0以上。
ということはもちろん,必ず-2よりも大きい。
よって,すべてのxで③が成り立つ。
よって,解はすべての実数…(答)
xの不等式
x^2-2x+1>0
を解け。
左辺を平方完成して,
(x-1)^2>0\cdots④
(x-1)^2は0以上なので,だいたいすべての実数を満たすが,
x=1のときだけ,左辺=0となって,④をみたさない。
よって,xは1以外のすべての実数…(答)
実質,2次関数のグラフを考えているのと同じではあるのですが,
「2乗は0以上」という1点に絞って考えることで,暗記することを極力減らして,自力で答えを出せるようになります。
また,特殊パターンは突然出てくるので,普段から平方完成で考えるようにしておくと,迷わずに解答が書けると思います。
2次不等式に平方完成という選択肢を!
この記事では,2次不等式を平方完成を用いて解く方法を説明しました。
平方完成は,「解なし」「すべての実数」などになる場合の2次不等式では特に有効です。
すべての場合で平方完成が早いということはありませんが,解答方法の選択肢としてすぐに使えるようにしておきましょう。
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